やってはいけない! 壁式構造コア抜き

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エアコンの配管用にスリーブがあったらエアコンの修理や入替時にとても便利、スリーブがあればエアコン設置が手軽にできるので部屋の価値向上にも繋がるのでは?

 

 


そんな疑問にお答えします。

 

 

■目次
1:壁式構造の盲点

2:それでも、なぜやってしまうか?

3:念には念をいれて

 

 

1:壁式構造の盲点

結論、壁式構造の壁に無闇やたらにコア抜きをするのは絶対やめましょう!
声を大にして言います。絶対にです!

理由は、構造壁である部分にコア抜きを行った場合、構造体として問題が生じてくる可能性が高いからです。

具体的には、建物は構造計算をされて適切な壁柱・梁の形状や使用するコンクリート強度や鉄筋量などを様々なものを想定していますが、そこに穴を開けられ鉄筋を切断しコンクリートが削られると、引っ張り力に強い鉄筋や圧縮力に強いコンクリートが想定された機能をしなくなる可能性が高いです。

もちろん、たまたま運よくコア抜きした部分が鉄筋を切断しておらず、構造的ダメージが少なく済む場合もあるかと思います。ただ、それはあくまでも運がよい時の話であって、基本は何かしら構造に影響のある話になる=建物構造という建物の根幹をゆるがす話になる為、是正工事をしたほうがよいという話になります。自分は今となっては貴重な体験と言ってしまいますが、是正工事を行ったことがあります。実際には応力計算を行い改めて適切な鉄筋を配筋しコンクリートを流し込むという作業となりましたが、入居者がいる中での工事は不可能な為、該当する部屋から影響のない空室への引越しや泣く泣くですが退去の協力をいただくなど大変な苦労をしました。工事該当部屋以外の入居者にとってもコンクリートを斫る工事騒音もすさまじく、よいことは何ひとつありません。結果的に、工事費用や入居者の引越し代負担など含めると、約2000万円吹っ飛びましたorz  オーナーの知らないところで管理会社が勝手に行っていた工事ということで、管理会社側(その時は諸事情でPM会社BM会社の折半でした)で費用負担することになりました。薄利で事業を行うPBM会社にとっては致命的な損失になることは間違いありません。
よって、壁式構造の壁のコア抜きは絶対におすすめできません!

 

 

2:それでも、なぜそれでもやってしまうのか?
マンションはラーメン構造の物件が多く、柱に囲まれた壁については雑壁と言われる構造に影響のない壁で構成されている為、雑壁に配管用スリーブが設置されていることが一般的です。一方、壁式構造は高くても5階くらいまでの低層のマンションで採用されていて、バルコニー側にスリーブを設置せずエアコンの室外機を屋上に設置しているケースもあります。エアコン室外機の入替えをわざわざ建物屋上で行うとなると室外機の入替にかかる工事費用も割高になる為、色々と勝手のよいバルコニー側に室外機を置けるよう考えてしまうというのがカラクリです。

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(写真の赤線で囲まれた部分は”雑壁”と言われる部分の為、構造的に重要な壁ではなくスリーブなどを設けても構造への影響は原則ありません)

大手建設会社が不適切なコア抜き等により、大きな問題となった事例もあります。これを見たときは、本当にたまげました。私は建設現場でも働いたことがあるので現場の状況はよくわかっているのですが、とても厳しい話ですよね。
https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK17035_X10C14A3000000/
(引用:日経新聞

 

 

3:念には念をいれて

ここまで書いてきましたが、「そんなバカなことするはずがない!」と思った方も多くいらっしゃるかもしれません。私もそうでした。そんな勝手なことをするわけがないと・・・それでも実際にやってしまっていたんです。(念のため私の名誉の為に言わせていただきますが、私がやってしまったのではなく5年以上昔の担当者間でやりとりされたいたのが発覚しました)賃貸管理業界はオーナーやテナントに多くの要望をされ業務が多岐に渡る為、日々忙しく余裕がなく当たり前のことが当たり前にできないことも多くあると感じています。自分のところは絶対に大丈夫!と思う方にとっては無縁の話かもしれませんが、もし少しでもこのことのリスクを感じていただいた方は、ご自身の管理物件などで是非一度確認してもらえればと思います。